第16章 垣間見える優しさ
「わっ!もう…脅かさないで下さいよ…。え、起きてたんですか?」
「お前が部屋を抜け出す足音が聞こえたからな」
(あんなに忍足できたのに!)
「そうですか…。それより、私、知りませんでした。船から見る景色って綺麗ですね。水面はキラキラしてて、朝は空気が澄んでて。この間の時とはまた違って見える気がします」
前回は人質として堺の港を発ったということもあり、気持ち的にもずいぶん違うからだろうか
「お前、自分が人質で奴隷にされてる状況でも、景色見て綺麗だと思えるなんざ、本当に能天気な奴隷なんだな」
(むう…。また奴隷呼びに戻ってるし…)
「その"人質で奴隷"にした人に言われたくないです」
「はは、奴隷が主人にキャンキャン言うなよ」
「キャンキャン言いますよ。また突然安土を出て堺に向かうなんて…もう少し事前に話してくれたって良いじゃないですか」
「奴隷にか?」
「そうです、奴隷にだって知る権利はあります」
「くくく…、何開き直ってんだよ」
そう言う元就はどこか楽しそうだった