第15章 気づき始める気持ち
分かっていたことなのに、一体何に傷ついているんだろう
(あの人にとって私は奴隷で、信長様を討つための手駒に過ぎない…。分かってたのに…)
敵である元就に何かを期待して、求めてしまっていた
(許嫁の振りをした時、キャサリンのことも…散々な言い草だった…。きっと私も同じなんだ…)
「ばかみたい…」
少し触れ合えただけで、心を許してくれたような気になって、元就へ気持ちが傾いてしまっていた
名前を呼んで呼ばれて、あんな笑顔を見せられて、自分は彼の特別になれたのかもしれないと勝手に舞い上がり、自惚れていた
自分の気持ちを認めた途端、目頭が熱くなる
部屋に入るや否や、溢れ出した涙がこの気持ちの正体を嫌でも気づかせる
(ああ…、私…。あの人が好きなんだ…)
"好き"
そのたった一言がストンと胸に落ちた
足から崩れ落ちるように畳に座り込み、誰にも聞かれないように、声を殺してしばらく泣き続けた
ポロポロとこぼれる涙は、畳の色変えて濡らしていった
「うぅ……っ」