第1章 ブラック本丸へご招待
『.......あのー..お兄さん..??多分厠は通り過ぎたし、お散歩コースにはこの道はけったいやと思うんやけど...』
どこまで歩いても後ろを付いてくる彼にたまらなくなり、声をかけた。
「厠でも無ければ、散歩でもない。」
『さいですか...』
後ろからグッサリなんて、そんな士道に背くことはしないだろうが、なんでだろう?と首を傾げる。
「そこは床が脆いから気をつけろ。」
『あ、はい。』
「そこは滑りやすい。用心しろ。」
ん?
「雨漏りしている。左に寄った方がいい。」
あれ?懐かれた?
『えぇっと、お兄さん。』
「大倶利伽羅だ。」
『大倶利伽羅さん...手入れだけだったのでは?』
「手入れは受けた。」
『はい。』
「馴れ合うつもりはない。」
『...?..はい。』
「馴れ合うやつは自分で決める。」
『受け入れてくれた。ととっても宜しいのですか?』
「...好きだ。」
『おーい。聞いとるかー?』
そんな話をしていると、審神者がいるであろう部屋の前につく。
ここに来るまで、すごく道のりが長く感じたのは気の所為だと思いたい。
ふぅー。っと一息をつき、戸を引く。
『失礼しますよー。』
中に入ると3振りの刀剣男士に刀を向けられ、
恐怖で後退りしながら震えている男がいた。
『ちょいまって!そんなことしたら穢れてまう!』
「なんだ、お前は。」
「部外者は黙っててくれるかな?」
「それとも共に殺されたいのか?」
『いや、こいつ捕まるし、わざわざこいつ殺って穢れるんも割に合わんやろ?』
「捕まる?どういうことだ..?伽羅坊..お前..怪我は?」
「伽羅ちゃん..その子は?」
「娘..何をした?」
「国永、光忠、三日月。そいつを殺るのは止めておけ。」
『えっと、とりあえず大倶利伽羅さんの手入れはしました。それ以外は何も。
この人の次に審神者になる..名前と申します。』
「ほう..わざわざ真の名を名乗るとは神隠しをされる覚悟はあるのか?」
『まぁ、それは構いませんけど。』
「は?」
キョトンとした白いお兄さんに言葉を付け足す。
『なんもしてへんのに、隠されるんは嫌ですけどね。』
とりあえずは、刀を収めてくれた御三方に安心したのか審神者がやっとこさ、言葉を発した。