第1章 ブラック本丸へご招待
いつもの玄関の扉が心做しか重たく感じる。
本丸の外は雨で、
気味の悪い寒さはこれが原因だったかと納得した。
自分になんとなく結界を張り、
気配を辿って足を進める。
『ここに、誰かいる...』
刀剣男士の部屋だろうか?
人間の気配ではないことはすぐにわかった。
引き戸を開けると
壁に持たれて座り込み、浅く細かい息をする褐色の男がいた。
重傷だ。そう思いながら、部屋の中に足を進める。
「!!誰だ..っ...」
引き戸を開けた時は
気づく余裕もなかったのだろう。
今回は足音で反応し、
しっかりと警戒をし、刀に手をかけていた。
『新しくここの審神者になる、名前と申します。』
「出ていけ...もう、人間はいらん。」
『ここにいる審神者は大罪を犯しました。
後ほど政府に身柄を引き渡します。』
「それ以上近づくな。
殺されたいのか。」
『えぇ。構いませんよ。
あ、でも闇堕ちしてまうのはあかんな...
んー...手入れだけでもさせてもらえんかな?』
真意を確かめるように眉をひそめ、
刀から手を離した。
「.....手入れは受けてやる。」
『ありがとう。』
目の前に両膝を付き、優しく彼を抱え込むように抱きしめる。
「っ?!何を...っ.. !」
『我慢してね。これが私にできる手入れらしいから。』
身体が軽くなっていくのがわかったのか、
大人しくしてくれていた。
傷付いた身体を見て、胸が痛くなる。
きっと、いろいろと守ろうとしたんだろう。
頭を撫でながら、心の傷も癒えますようにと祈った。
「あんたは....暖かい..な...」
『そうかな?外、寒いからだいぶ冷えてると思うんやけど。』
クスクスと笑いながら、身体を離す。
彼の顔や手などを見て傷が無くなっていることが確認できた。
『よかった。傷、治ってるな。うんうん。男前やん。
よし、それじゃ私行くわな。』
手入れだけという約束はとりあえず、今は守ろうと立ち上がり部屋を出る。
審神者の部屋はどこかなー?と歩いていると、後ろから足音が聞こえる。
パッと振り返ると、先程のお兄さん。
トイレかな?それとも傷も治ったし、散歩でもしよるんかな?
そう思いながら、
審神者の気配を辿る。結構遠いなー。