第3章 日常の始まり
私が20歳のころの話だ。
お金欲しさに夜の世界へと飛び込み、
お店が借りてくれた家で、
生まれて初めての一人暮らしを始めてた。
お酒は飲めないけど、話をするのは得意だったためか、
会話を楽しみに来てくれるお客様たちも居た。
三年ほど立って、そこそこ夜の女が板についてきたころ。
お店の古株の女の子が入院をすることをきっかけに
お店を引退したのだ。
右も左もわからない私に、丁寧に根気強く教えてくれた先輩なだけに、とても心配したのを覚えている。
メインマネージャーがとても落ち込んでいて、
よくよく話を聞くと、先輩と彼は結婚間近だったそうだ。
二人でバーを開きたいねだなんて話をしていたらしく、
もうテナントも決まって、初期費用も払ってしまったのだとか。
でもこのままじゃ開けれない。目処が立たない。と言われ、
情に流されてしまった私は、先輩が退院するまでは、
私でよければ手伝いましょうかと。
そこからは手伝いをし、
軌道にも乗り、
とんとん拍子にうまくいっていた。
私自身も、お店を出したくなっていて、
相談すると、応援してくれて、知り合いの不動産屋さんを紹介してもらった。
お店を開けるまで、金銭の管理が大変だと思うからと給料の天引き分から、家の家賃を払っといてあげると言われ、
お言葉に甘えて、お店のために家具や雑貨、食器などを
貯金をはたいて買い揃えた。
オープンまでの3日前。
一本の電話が。
『家賃3か月滞納してますため、契約通り、今月末でに引き払ってください。』
喉に何かが刺さったような感覚がした。
どういうことだと問いただしてもわからないの一点張り。
仕事もいつから手を回していたのか、辞めさせられていた。
「自分の店」のために買って置いておいた家具や雑貨、食器などはさも元々あったかのように「彼らの店」に置かれていた。
待ってよ。私の名前で契約したはずだ。なのになぜ、
当然のように彼らが使っている?
契約書の確認をする際、彼らの名前に変わっていた。
初期費用を預けたのが間違いだった。
家賃の滞納をすれば、審査は当然落ちる。でも審査は通ったと不動産屋からは連絡があったはずだ。
だとすれば...グル...。
こんな裏切りってあんまりだ…。
一体どこから?一体いつから?
私は操られていた?
もう誰も信じない。もう誰の手も借りない。
自分一人でのし上がって見せる。