第3章 日常の始まり
あれからどんちゃん騒ぎしている皆にお休みを告げ、
自室に戻り、
風呂を済ませ、ベッドに入った瞬間に睡魔は襲ってきた。
そして、夢を見た。
20歳のころの思い出したくもない話だ。
もう、年齢も年齢で10年近く経っているのに、なぜ
こんな夢を見てしまったんだろう。
とため息を吐きながら起きたのは、
8時を回ったころだった。
顔を洗って歯を磨き、髪をセットする。
今日は何を着ようと着物たちと睨めっこ。
途中、
玄関のドアを叩く音が聞こえた。
はいはい。と返事をしながらドアを開ける。
大倶利伽羅「朝食が出来たそうだ。」
『あー。ありがとう。ごめん、まだ何着ようか迷ってて...』
入ってもいいかと、私の背後に目を向けられ
どうぞと中に通す。
和室に入ると着物を暫く眺める。
大倶利伽羅「今日は特に予定は無い。
これで充分だろう。」
そう言って、
紺色に蝶柄の小紋の単衣と灰色よりの銀の絽の帯を引っ張り出してきた。
グラデーションのような雲の柄にむかって
着物の蝶が羽ばたいているように見える。
『めっちゃ好きな組み合わせ。なぁ、また迷ったら選んでくれん?』
大倶利伽羅「......あぁ。」
口角を少し上げ、柔らかく目を細めた彼に、
ときめいてしまった。
広間で待っていると、部屋を出る彼の背中を少し眺め、
ときめいた心を誤魔化すように、
タバコに火をつける。
今日は特に予定が無いのなら、予定を作ってしまおう。
何がいいかと吐き出す煙を眺めながら考える。
やはり、
畑やら内番メインに組んだ方が良さそうだな。
毎回買い物だとコスパが悪い。
決まったところで火を消し、
着替えを済ませ、広間に向かう。
『おはよー。』
笑顔で挨拶をしてくれる皆に少しばかりホッとして席に着く。
非日常が日常として溶け込んでいくのを感じる。
私はここで産まれ、ここで生きてきた。
そう勘違いしそうになるくらい、
皆があまりに自然に接してくれてるから、
審神者になってよかったと
昨日の今日といえ、そう思ってしまう。
朝食を終え、自分の食器を下げて洗おうとしたら
台風のように長谷部が食器をさらっていってしまった。
ありがとう。とお礼をいい、
平野くんと秋田くん、鯰尾くんと骨喰くん。
そして岩融と今剣くんに畑をお願いすると
二つ返事で任されてくれた。