第2章 ブラック本丸ならぬホワイト本丸
清光、安定は思いのほか甘えん坊で、
加州くんと大和守くんって呼ぶと
ぷくーっとほっぺたを膨らまし拗ねられた。
一服を邪魔してごめんねー!飲み直してくる!と
ヒラヒラと手を振り去っていくのを見送ったのは、
どれくらい前だったか。
気持ちを落ち着かせるために吸っていたタバコ。
何本吸っても、何回煙を吐いても、
苛立ちまでは吐き出されてはくれなかったようだ。
ダメだ。このままじゃ。
怒りに震える手を見て、
ここまで怒ったのはいつ以来だろう。
と嘲笑う。
居てもたってもいられない。
そう思い、宴会中の部屋に戻り、
掛け軸の前に正座をして、
無言で土下座をした。
騒がしかった部屋が何事かと静まり返る。
長谷部「あ、主!!何があったんですか!?」
三日月「何やら思い詰めた顔をしているな。
どれ、じじぃに話してみるといい。」
薬研「大将。具合でも悪くしたのか?」
『清光や安定から聞きました。
何度も折られたことのある刀剣男士たちを前に
信用してほしいと仄めかして、申し訳ございません。
軽率な発言だった。』
和泉守「俺たちは気にしちゃいねぇよ。」
堀川「顔をあげてください!」
『前の主を...殺してやりたい。
きっとこの先、何度も何度も、頭の中でアイツを殺すと思う。
憎くてしょうがない。
あなた方の気持ちや、されたことも知らないで
能天気に挨拶してた私は、もっと憎くてしょうがない。
ほんまに.... ごめん。』
小狐丸「...胸を張ってください。
お優しい主様。」
石切丸「憎しみは穢れだよ。でもね、」
岩融「俺たちは嬉しくてたまらないと思っている。」
何故?そう思って顔を上げる。
『嬉しい...??』
次郎太刀「この料理も、アンタの言葉も全部アタシらのことを考えてくれてるのがわかるんだよ。」
太郎太刀「どれも優しい味がしました。」
ふと、涙が伝った。
小夜「復讐...主にはしてほしくない...」
宗三「ほら、泣き止みなさい。僕達は充分、」
大倶利伽羅「アンタを認めている。」
周りを見ると、怪訝な顔も距離を感じる空気感もなかった。
優しく微笑む皆に、
私は嬉しくて よろしくお願いいたします。と
ぐちゃぐちゃの笑顔で頭を下げた。