第1章 1日目 ―潜入―
漆黒の夜が明けて、
天国のような白い光に包まれる町。
「へい、いらっしゃい!」
「今ならまけてやるぞ〜〜」
早朝から城下町は、
客を呼び込む声が無数に行き交い、
買い物をする町民達で大賑わいだった。
そんな流れに苦しくも逆らいながら、今日から女中として働く春日山城へと向かう神楽。
敵地だというのに時折、甘い匂いが甘味処から香って、つい寄り道をしてしまいそうになる。
(城下は、結構賑やかなのね……)
すれ違う人々の表情は、笑顔で楽しそう。
そんな顔を見ていると、神楽の胸の奥は、無意識にザワザワと騒がしくなる。
いつもの調子を狂わせてはいけないと、ブンブンと顔を横に振り、深呼吸で気合いを入れ直す。
(今日から、私は間者だ。必ずや、主様──『家族の仇』のために。この任務を全うする。)
そう心の中で宣言すると、神楽は小走りで人の波を上手にかき分けていく。
『家族の仇』という言葉に、得体の知れぬ違和感を抱きながら─────