第1章 1日目 ―潜入―
幾つかの人波をかき分けると、先程まで続いていた店の並びが途切れ、1つの門が立ちはだかる。
「ここが、春日山城……」
上を見上げると、それはそれは見るだけでも迫力が伝わってくる、大きな大きな春日山城が凛と聳え立っていた。
あまりの迫力に言葉も忘れ、虚無のまま門をくぐり抜けようとしてしまい、当たり前のごとく門の前に立っていた見張り兵に止められた。
「おい、女。城へ何用だ。」
「……あ、申し訳ありません。私、今日から春日山城で働く神楽と申します者で───」
「──神楽様!お待ちしておりました。」
神楽の名を呼んだのは、門兵…………ではなく、その向こう側──門の向こう側にいる1人の武士だった。
武士は門兵を軽く手で払いのけると、神楽の前へと歩み出る。
「私、名を五郎と申しまする。どうぞ、気軽に五郎とお呼びくださいませ。」
「は、はぁ……よ、よろしくお願いしますね。五郎さん。」
(あれ?私、女中として働くんだよね……?)