第1章 1日目 ―潜入―
「神楽……いよいよだ。今日から越後に14日間潜入するんだぞ。」
「──はい、主様。」
月は雲に覆われて、
地が漆黒の夜を迎えた頃。
場所は越後。
春日山城の城下町でも、外れの方に位置する1つの小さな宿で、その作戦は実行された。
「いいか、神楽。これは、我が家のために……家族のために、やらねばならぬのだ。今、家族の仇を討てるのはお前だ──神楽。」
「はっ、心得ております。」
『家族の仇』。
この言葉に、何度振り回されて、ここまで生きてきただろうか。いい加減聞き飽きた。
「いかなる場合でも、敵の者に深入りすることは決して許さぬ。万が一があれば、敵もお前もこの手で殺す。──いいな。」
「……御意。」
「───────行け。」
その言葉と同時に、神楽と呼ばれた少女は、宿の裏口から城下町の中心地へと、足を急がせた。