第2章 *雨が強かった日【イデア・シュラウド】
「…どうなの?下、着てないんでしょ?…僕だって男だよ、ユウ氏。襲われたらどうするの…」
少しだけ冷たい目と困ったように下がった眉の先輩が、私をじっと見つめてくる。目をそらしたいけどそらせない。そんな感覚。
「せ、先輩と一緒にいられるのが嬉しくて、ちょっと油断してました…っ。ごめんなさい、嫌わないで…っ、」
違う。本当はこんなことになる予定ではなかった。大好きな先輩と一緒の傘に入って嬉しくなって浮かれてしまったからだろうか。ただ、一緒にいられることが嬉しかっただけなのに。
弱々しい言葉と同時に、先輩の目が少し怖くて思わず目から涙が出そうになる。やってしまったという後悔と嫌われたかもしれないという恐怖。
するとグッと目元に先輩の手が当てられ、落ちそうになった涙を拭われた。目の前にはまた、慌てる先輩。
「ご、ごごめん!怖がらせるつもりはなくて…っ!た、ただ少し嫉妬したといいますか…」
君は誰が相手でもこんなに心を開いているのか、それとも僕のことを男だと思っていないのかと、少しカッとなって。
先輩の手は、ゆっくり私の頬を撫でた。少し冷たくて、優しい。
「…他の人にはこんな無防備にしないで。襲われるよ」
「っ、は、はい…」
雄。今日の先輩はいつもより男の人だった。そもそも先輩以外の男の人の部屋なんて1人じゃ上がらない。エースとデュースでさえ、オンボロ寮の談話室で複数で会うくらい。
ああ、それをきっと先輩は分かってない。私がバカでポンコツだから、先輩の部屋に上がってシャワーも浴びちゃって。
ああ、違う。