第2章 *雨が強かった日【イデア・シュラウド】
先輩の細くて綺麗な手は私の足首を優しく掴み、クッと私の膝を折り曲げた。無理やりされたわけではないのに足が床と上手く滑って、伸ばしていた足はいとも簡単に片足だけ体育座りの状態になってしまった。
しまった、これでは見えてしまう。
「〜〜〜〜っ!!!!」
私は焦ってパーカーの裾を引っ張り、足の間で押さえつけた。
先輩の前で醜態を晒すなんてしたくないという気持ちと、下着まで洗濯してしまった迂闊な考えが頭の中でこんがらがる。
私のおかしな行動に先輩も驚いたのか、目を丸くして私を見た後スッと目線を落とし、黙ったまま私の足に絆創膏を貼った。
「あ、ありがとうございま…」
「…ユウ氏は、他の男の前でもこんなに無防備なの?」
私の言葉をかき消すように言った先輩は、じっと私を見つめてくる。その目線は少し冷たくて、なんだか怒っているように見えた。
…ああ、違うのに。
そんなことないですと言いたいのに、先輩の考えていることが読めず固まってしまう。