第3章 *私だけ本気だった。【フロイド•リーチ】
フロイド先輩とシたそれは、考えられないくらい優しいものだった。
「小エビちゃん、痛くない?」
「…かーわい、もっと顔見せて??」
「はあ、オレちょー幸せ、」
甘くとろけるようなセリフと、何か愛しいものを見るような先輩の目。私じゃなくても絶対に自惚れてしまうであろうその言葉、表情は私に一瞬だけ夢を見せてくれた。
ああでも違うのだと気付いたのは、今日の朝。
「人間の交尾ってこんな気持ちいいんだねぇ、小エビちゃん、またシよ???」
笑顔でそう言われハッとする。
先輩は人間の姿での交尾に興味を持って私を誘ってきただけ。決して好きな人と一つになりたくて、なんていう発想なんかじゃない。
結論、女だったら誰でもよかったわけで。
ああ、そうだよなあ。ここ男子校だし、私しか女いないし。
胸が押しつぶされそうな衝動に駆られ、なんだか息がうまくできない。ああ、辛い。抱かれたときはあんなに幸せだったのに。
…思い出せばキス、してくれてないな。そうか、セフレとかにキスってしないんだもんね。
脱ぎ捨ててある服に手を伸ばし、先輩のことを見ないようにして腕を通す。後ろから小エビちゃん!と肩を引かれるが無視。幸い、私が泣いているのかいつも振り解けないような力で掴まれる肩も、今日は振り解けた。
そして着替え終わり、荷物を持って外に出ようとする。
…落とし前くらい自分でつけないと。
そう思いフロイド先輩の方を振り向くと、その場で立ち尽くしたまま戸惑いと悲しさを含んだ表情で私を見つめていた。
なにその顔。意味わかんない。
「先輩、私、先輩のこと好きです。…だからもう、私に絡まないで下さい」