第1章 *声のボリュームは抑え気味に。【セベク・ジグボルト】
「…?セベク…?」
「お前、本気で言っているのか?」
なぜか赤い顔をしたセベクは私のことをジッと見つめてくる。
じわじわと距離をつめ、すぐそこに彼はいる。
「え、うん…」
そう言うとセベクは大きくため息をつき、目を横に逸らした。
なんだろう、いったい…。
「…僕だって男だ。2人きりの部屋で好きな女を前に我慢できるほどの者ではないぞ」
くっと顎を上げられ、パチリと目が合う。
つまりは、そういうことだ。セベクの言っていることはそういうことだ。
意味を理解した途端恥ずかしさが溢れ、顔に熱が篭る。
そんなつもりはなかったのだが、確かにそうだ。私たちはもう恋人同士なわけだし。
でも、
「セベクならいいよ…」
そう言うとセベクはきょとんと目を丸くした後、少しむきになったような表情を見せた。
「煽ったのはお前だからな」
「っ、」
私はセベクを連れ、オンボロ寮に入った。