第1章 *声のボリュームは抑え気味に。【セベク・ジグボルト】
そして気付けばオンボロ寮の前に着いた。
「…あ、これ」
渡し損ねたお菓子を彼に渡すとボソリと、感謝すると言われた。
2人揃って向き合ったまま立ち止まったはいいものの、どうすればいいか分からない空気が流れ、そのまま。
セベクが「じゃあこれで」みたいなことを言い出したら今日はわかれよう。結局お菓子を渡すだけで終わってしまったと思ったその時、セベクの口が開いた。
「…いつも授業後寝ているお前を起こす時、女みたいな顔だなと思っていた」
「え…、」
「お前に何度も可愛いという感情を抱いたことがあったが、お前は同じ男でありこの感情は勘違いだと思い直していた。
だがこの前、お前が女だと知り僕の感情に間違いはなかったんだと確信した途端、どうやって接すればいいか分からなくなってしまった」
「セベク…?」
一言一言ゆっくり話す彼のことを呼ぶと、やっと彼は私の方を見た。ずっと落とされていた目線が私の方は向き、パチリと目が合う。