第4章 夕虹
なんで……?
予想外の名前に指が震える。
……なんで、おまえがサトに連絡とってくんの?
智のスマホ画面にあがったのは、松本潤の名前と、今日あいてますか。のメッセージ。
昨日の晩、智は、駅で松本に会ったって、言っていた。
もしかして、それについて何か探ってくる気だろうか。
それとも、単純に智に興味をもったのだろうか。
いずれにしても……あまり嬉しくない展開だ。
何よりも憂えるのは、どうやら智が松本を悪く思っていないこと。
なんなら少し意識してること。
あんなに他人に無関心だったやつが、だ。
爪を噛みながら考える。
もやもやと黒い気持ちが沸き上がってくる。
……あんなポッとでてきたやつに、智の時間を渡したくない。
「……ニノ?どした?」
昼前に目が覚めたらしき智は、いつもは起きてる俺がいまだに智の隣で横になってるから驚いたらしかった。
眠そうな瞳をパチパチとしばたたかせながら、寝起きの温かい指で俺の頬を触ってくるから、俺はしんどい顔を作ってみせた。
「なんか……頭痛い」
「熱あんの?」
「わかんない……」
言って、顔色をかくすようにうつむいた。
智が心配そうに、どうしたんだろうなぁ、と俺の髪の毛をよしよしと撫でてくれる。
泣きそうになりながら、その指を感じる。
嘘だ。
頭なんか少しも痛くない。
結局、俺は、仮病で智の気をひくような子供じみたことしかできないんだ。
だって、こうすれば、すぐ帰らなくてすむ。
だから……智も、でかけないですむ。