第8章 Good!!
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家政夫として働き始めて、10日ほどがすぎた。
今だ、和也は俺の作ったものを食おうとしない。
それでも仕事は仕事だ。
例え食ってくれなくても、夕飯は毎日作らねばならない。
一通りの掃除を終え、さて、今日のメニューはどうしようか、スマホのお料理アプリを見ながら考えていると、家の電話が鳴った。
これまで何回か、この家の電話が鳴ったことはあるが、どれもこれも投資や家庭教師などの勧誘の電話だったから、どうせ今回もそうであろうと、切る気満々で、
「はい」
と、出た。
一応家政夫だから、よそ行きの声で。
すると、
「あ、二宮和也くんのおうちの方ですか」
思わぬ名前を発する男性の声が飛び込んできて、一瞬身構える。
「………そうですけど」
よくよく聞けば、相手は和也の通う学校の養護教諭であった。
和也が体育の時間中にふらついたと思ったら、そのまま動けなくなったらしい。
「微熱、ですか」
ほらみろ、体調崩してんじゃねぇかよ。
俺は、呆れ半分、心配半分で、養護教諭の話を聞く。
「……今は保険室で寝かせてるんですけど、気分がよくなったら、帰宅させようと思うんです。おうちの方がおられたら、驚かれると思って、ご連絡差し上げました」
「……分かりました。ありがとうございます」
俺は、ため息をついて受話器をおいた。