第8章 Good!!
………でしょうね。
はたして、昆布を大量にいれた特大おにぎりは、朝までダイニングの上に手つかずでおいてあった。
俺は、はぁ、とため息をついて皿を手に取る。
2日続けて夕飯をとらない和也を、ほんの少しだけ心配してやる。
………だって、あいつ、昨日帰ってきてから飲まず食わずじゃねぇの?
キッチンの掃除を終えると、家政夫の俺は自室にもどるんだから、いつでも……なんだったら夜中にでも、1階におりてきて、自由に飲み食いすればいい。
いや、むしろそうすると思っていた。
だが、どうやら和也はそんなこともしてない様子だ。
水切りかごにもシンクにもコップひとつ、水滴ひとつありゃしなかった。
洗面所で身支度をしている和也に、せめて、朝飯に食ってくか、と、おにぎりをすすめたが、
「いりません……」
と、けんもほろろに断られた。
冷蔵庫から紅茶のペットボトルを取り出す和也の後ろ姿に、「行ってらっしゃい」と、声をかけたら、少しだけ頷いて、出ていった。
反応はしてくれるのだが、いかんせん目があわない。
俺への拒否感半端ねぇな………。
むしゃむしゃとおにぎりを頬張った俺は、海苔のついた指をペロリとなめて考えた。
長期戦だな。