第8章 Good!!
その日の晩。
やっぱ肉だろ、と、牛肉をつかって牛丼にしてみた。
肉が嫌いな男なんて聞いたことねぇし。
アプリを頼りに、実験よろしく大さじ小さじを駆使して、味付けも完璧にした。
「牛丼好きか?」
「……腹すいてないんで」
………でも、やっぱり食ってはくれなかった。
次の日の晩は、ならば和食にしてみようか、と、きつねうどんを作ってみた。
作り方に自信がなかったから、揚げも、出汁も、うまそうなメーカーのものを買ってきた。
青ネギはちゃんと刻んだ。
「うどん、食う?」
「いりません」
それでも、やっぱり和也にはいらない、といわれた。
次の日は、中華にした。
餃子を買ってきて、焼飯をつくって、ふかひれスープの素とかも買ってきて、それなりの中華定食ができた。
「中華にしたぞ」
「胃の調子悪いから」
……けれども、和也は、部屋から出てこなかった。
手強い。
手強すぎる。
俺は、床の掃除をしながら、はぁ、とため息をついた。
櫻井さんにいわれた、俺の仕事は、家事と和也の世話だ。
それができてないとなると、給料ももらえなくね?
中途半端な仕事ぶりは俺の本意じゃない、とはいえ。
…それに、いよいよあいつの体も心配だった。
わがまま坊ちゃんなんて、飯を食おうが食うまいが、知ったこっちゃねぇ、と思っていたけど、毎日同じ屋根の下で暮らしてるからか、次第にその存在が気になりだしてきている。