第8章 Good!!
家事などの説明書にくらべ、えらくシンプルなそのA4の紙には。
『 和也について
和也の部屋には入らない
生魚は出さない
過干渉禁止
以上』
と、だけあった。
「………………」
こんだけ ?
俺は、目が点になってしまった。
櫻井さんはよっぽど大物なのか、それとも限りなく冷徹なのか。
大事な弟の情報、たったこんだけってか。
ふーん………と、ひとりごちながら、紙の束をトントンと整えクリアファイルに元通りにしまう。
「…………確か…高校生っつってたな」
写真では色白で神経質そうな印象をうけた。
お年頃だ。
部屋に入るな、干渉すんなってことは、よーするにほっといてくれ、ってことだろ。
まぁ、男子高校生なら、ごくありがちな家族との距離のとり方といえよう。
自らを振り返ってみても、学生の頃はそんなもんだった気がする。
精一杯大人びてみせたくて、だけど、バカをやったりして。
思えば、あの頃が1番悩みもなく素直に生活していた。
和也も、きっと思春期、反抗期真っ只中ってとこだろ。
なるほど、ほっとくに限るか。
そこまで考えて、時計を見あげたら、ちょうど10時になろうかというところであった。
ちょっと遅くなったけど、洗濯機まわして、掃除を始めようか。
「………俺は今日から家政夫だ」
俺は大きくのびをして、パンと、両頬をうった。