第8章 Good!!
ぼんやりと窓の外を眺めてると、コンコン、と遠慮がちに扉をたたく音に飛び上がった。
やべ。
さっさと仕事の準備しないといけないのに。
「……大野さん?櫻井です」
「あ、すみません。今から出ようと…」
櫻井さんの声に慌てて扉を開けた。
すると、そこには、高そうなジャケットをはおり、今からまさしく出かけます、というような出で立ちの櫻井さんが、申し訳なさそうに立っていた。
え…………なに?
固まった俺に、櫻井さんは頭を下げた。
「………あの。突然なんですけど、私はもう行かないといけないんです」
「…………え?」
予想外の言葉に、俺の思考は一瞬停止。
行かないといけないって。
…………どこへ?
櫻井さんは、苦笑しながら首を傾げてみせた。
「……昨晩、職場でトラブルが発生して、その対応に私のチームが指名されたんです。で、その影響で、出張自体もそのまま急遽前倒しになりまして…」
「…………はぁ」
「なので、昼の飛行機で飛ばないといけなくなってしまって。………あの、ほんとに申し訳ありませんが、あとよろしくお願いします」
深々ともう1度お辞儀をした櫻井さんの綺麗なつむじをじっと見つめる。
………マジでいってんのか。
俺は唖然としてしまった。
あとって。
あとを頼むって。
……………ヤバくない?
「買い物などは、すべてこれで。他に必要なものもこれで揃えてください」
櫻井さんは、1枚のカードを俺に渡してきた。