第8章 Good!!
櫻井さんは、写真の彼をじっとみつめ、ぐっと唇をひきしめる。
「……人見知りの和也は、新しいお手伝いさんなんて必要ないと、他人の介入をがんとして拒否してます。ですが、あいつは1人だと何もしないんです。飯すら食わない」
甘やかしすぎでしたかね。
言って、櫻井さんは苦笑する。
「…なので、逆に私と同じくらいの若い男性なら、女性より心を開きやすいのではないかと思いまして。募集を住み込み可能の男性限定としてました」
それで、家政夫だったんだ。
合点がいった。
「仕事内容は、和也の食事と身の回りの世話と掃除全般です。私は貴方に来ていただきたいと考えてますが、条件は住み込みです」
どうですか、と、櫻井さんは、俺の目をじっと見つめてきた。
住み込みねぇ……
俺は、少しだけ考えた。
でも、どうせ、独り身だし、何処に泊まろうが今は働き口の確保が一番だよな。
それだって、要は、この高校生のぼっちゃんに飯を食わして、家を掃除しときゃいいんだろ。
それで、この豪華な家に泊まれて、日給一万なら、こんな美味しい話はないじゃないか?
そう5秒で結論づけた俺は、すぐに頷いた。
「はい。よろしくお願いします」
すると、櫻井さんは、はぁぁ〜よかった、と、背もたれに背を預けて笑った。
真面目な表情が、途端にくだけた雰囲気になり、なんだか俺もほっとして体の力を抜く。
「ひとめみたあなたの印象から、是非来ていただきたい!と思ってました」
…………どんな印象だよ
「…ありがとうございます」
俺は、曖昧に微笑んだ。
いや、よかった、と櫻井さんは髪の毛をかきあげた。
「では明日からさっそく来てください」
「はい」
俺は、ペコリと礼をした。
よかった。
とりあえず仕事は見つけれた。