第8章 Good!!
「…実は、長年勤めてくださっていたお手伝いさんが、先日体調を崩されて辞めてしまいまして」
「…はぁ」
「私は家事がてんで駄目で、ほとほと困りはてているところでして…」
「…はぁ」
「それでもなんとかやっていたのですが、来週から私が急な海外出張に行かなければならなくなり、急遽家事を手伝ってくださる方をさがしていた次第です」
?
話がみえない。
櫻井さん海外出張行くんだろ。
じゃ、お手伝いなんていらないんじゃ……
そう思っていたら、櫻井さんは、クリアファイルから一枚の写真を取り出し、俺の目の前に置いた。
そこには、色白の繊細な雰囲気の男の子が写ってる。
「弟…のようなものです。今、学校に行ってるので留守ですが、高校2年です」
「……弟」
の、ようなもの?
「二宮和也といいます。……幼い頃に離婚して出ていった私の母が、再婚してできた子供なので、姓は違いますが」
櫻井さんは、はぁと、ため息をついた。
「……母は5年前に亡くなっています。和也の父親は……いません」
………いません?
そこで、櫻井さんはそれ以上は語らないというように、少し言葉を切った。
俺は、その空気を察し、浮かんだ疑問符を飲み込んだ。
言いたくないんだ。