第8章 Good!!
通されたのは、玄関入ってすぐの所謂応接室。
さぞかし高いんだろうなぁ、と思う皮のソファーに浅く座り、そわそわしていると、
「お待たせしました」
玄関で応対してくれた男性が、クリアファイルを片手に部屋に入ってきた。
腕まくりをした白いシャツに、ベージュのパンツを上品に着こなしている彼は、この家の主人なのか。
大きな瞳が印象的な顔立ちをして、その所作には育ちの良さが滲み出てる。
年は20代後半といったところか。
俺は慌てて立ち上がり、ぺこりと礼をした。
男性は、どうぞ座ってください、と、言いながら、俺の向かいのソファに座った。
「ご応募ありがとうございます。私、櫻井と申します」
「あ、はい。どうも」
ぎくしゃくと座る。
あれ、と思った。
…さっきみた表札の名前と違うな。
そんなことを思いながら、俺から履歴書をうけとり、ざっと目を通す彼…櫻井さんを、緊張しながら見守った。
しばらくして櫻井さんは顔をあげ、目を細めニッコリ微笑んだ。
「えっと…質問をいくつかさせてもらいますね。お掃除は得意ですか」
「はい」
……嫌いだけど。
「料理はできますか」
「はい」
The男の料理だけど。
「住み込みは可能ですか」
「は……え?」
住み込み??
俺は驚いて、顔をあげた。
すると、櫻井さんは困ったように眉を下げた。