第8章 Good!!
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「おお………これはなかなか………」
俺は、ほぉ…と、感嘆の声をあげた。
気後れしそうになるほどの、デカイ屋敷の前で佇む。
こんなのテレビドラマでしかみたことない。
蝶よ花よで育てられるお嬢様が住む、それだ。
マジか………
思わず、手汗をヨレヨレになったスーツで拭った。
豪奢な表札には、二宮、とある。
すがる思いでかけた家政夫の申し込みは、即日面接の流れとなった。
よっぽど至急の募集なのだろう。
すぐに来れるか、という問いに、はい!と飛びついたのだ。
いそいで着替え、送られてきたメールに添付してあった地図を頼りに向かえば、そこは都内でも有数の金持ちの街。
芸能人や、会社社長だらけだと聞いたことがある。
この屋敷だけでなく、まわりに並ぶ家もエグい。
俺のアパートごと敷地に入るんじゃないかとすら思う。
どうでもいいけど……めちゃめちゃ広い範囲を掃除させられそうじゃね?
少し不安になりつつ、ぴったりと閉じられた扉の横の近代的なインターホンに指をのせた。
『……はい』
「あ、あの面接にきました。大野です」
『どうぞ』
電話したときと同じ声が応答したかと思うと、目の前の扉がスラリと開いた。
俺はお邪魔します…と、口の中でもごもご言いながら足を踏み入れた。