第7章 月虹
雅紀さんは、ふー…あっつい、と呟いて、俺の隣に腰掛けて、タオルで髪の毛をふいてる。
ホカホカとした体温と、フワっとただよう清潔なシャンプーの香りに、ドキドキする。
付き合ってから、一度も見たこともない姿は、何もかも新鮮。
距離感すら、いつもより近い気がするな。
すると、雅紀さんが、俺をみて、眉をひそめた。
「カズ?まだ髪濡れてんじゃん。乾かした?」
「乾かしましたよ」
雅紀さんが風呂に入ってる間に、借りたドライヤーで、一通り温風はあてたけど………。
指で頭をさわる。
うーん……確かに少し湿ってるかな?
なんだかソワソワしちゃっていい加減だったかもしれない。
でもいっつも洗いざらしの俺にしたら、ちゃんとした方だけど。
そんなことを考えてたら、突如ゴーーーという音とともに温風があてられた。
驚いて雅紀さんを振り仰ぐと、雅紀さんはしょうがないなぁという顔で、ドライヤーを手にニッコリ笑った。
なんか言ってるみたいだけど、ドライヤーの音で聞こえない。
でも、雅紀さんの長い指が俺の髪の毛をワシャワシャしてくるのが、照れるけど気持ちよかった。
乾かしてくれるんだ。
俺は、されるがまま、目を閉じた。