第7章 月虹
「…………く…」
壁に片手をつき、指先を少しずつ動かし、粘膜を押し広げてゆく。
痛みはないけど、気持ちよくもない。
「…………ふ………ん」
ただただ、準備という名の作業に没頭する。
汗の雫か、シャンプー液か分からないものが、ポタリと滴り落ちた。
今日まで、毎晩風呂に入る度に、後ろは少しずつ慣らしてきた。
同性同士のやり方を詳しく調べてみたら、切れないように柔らかくしておくのも大事だってあったから、指先から練習をはじめて、関節を増やし、本数を増やし。
……今ではローションがあれば、なんとかなるところまできてる。
「…………っん」
二本の指を出し入れすると、浴室内にクチャクチャと卑猥な音が鳴った。
………恋人の家の風呂場で、というシチュエーションが、なんだか変な気分になる
そのうちに、身体がかぁっと火照ってきた。
「……………?」
酔いが今頃まわってきたのか。
頭がフワフワしてきた。
というか。
クラクラする。
まずい。
俺は急いで、指を引き抜き、温くしたシャワーを頭から浴びた。