第7章 月虹
やはりどこか緊張しているのか、飲んでもほとんど酔わない自分にひそかに苦笑する。
いつもならグラス1杯から2杯で、いい気分になるのにな。
妙にクリアな頭で考えながら、雅紀さんがいれてくれたコーヒーを飲んでると、
「カズ、それ飲んだら、お湯張れたから先にお風呂入っちゃいな」
雅紀さんが、真新しいバスタオルとグレーの厚手のパジャマを、俺に差し出した。
今着てるスエットで寝ようと思ってたからびっくりする。
このスエットだって、俺が雅紀さんちに仕事帰りに寄った時に、リラックスできるようにってわざわざ雅紀さんが買ってくれたものなのに。
俺が、戸惑ってると、
「カズが泊まってくれるから、張り切って買っちゃった」
雅紀さんは、気にしないで、と微笑んだ。
事前に、何も持ってこなくて良いと言われたのは、このことだったんだな、と思う。
「……ありがとうございます」
いいんですか?と呟くと、
「うん。下着とかもあるよ?」
「あ、いえ、さすがにそれは持ってきました」
「そ?そんなら、これはカズの引き出しにいれとくね」
はい、と渡されたフカフカのパジャマを手に、俺はぺこりと礼をして、浴室に向かった。