第7章 月虹
学生時代、サトの部屋で、彼の帰りを待つことはあった。
だが、あれは俺の完全な秘めたる片想いだったし、むしろ想いがバレないように友達としての立ち位置としてサトを待っていたから、心がザワザワすることはあっても、こんなに甘い気持ちになることはなかった。
さっきのようにコンビニで朝ごはんを買い込んだりしたけど、食の細いあいつに食わせなきゃという思いが先行してたし。
「…………」
ゆっくりとソファにもたれかかったら、雅紀さんが脱いだままにしてるニットのカーディガンが触れた。
ブラウンの厚手のこのニットは、家でよく着てるのを見る。
手に取ると、とてもあったかくて。
ふわりと雅紀さんの香りがした。
…………雅紀さん
これを着て待ってるなんて恐れ多いけど、肩にかけるくらいはいいかな?
よいしょと、羽織る。
すると、温かくて、心もほんわかして………この上なく幸せな気分になった。