第7章 月虹
雅紀さんの匂いのする部屋は、もはや俺にとっては心が落ち着く場所になりつつある。
キッチンに入って、買ってきたものを並べた。
冷やさなければいけないビールなどは、…開けますよー、と呟いて、冷蔵庫に手をかけた。
几帳面な雅紀さんらしく、きちんと整理整頓されてる冷蔵庫の内部は、ピカピカだ。
うちの母ちゃんとはえらい違いだな、と苦笑しながら、扉をしめる。
雅紀さんの帰りがいつになるかわからないが、とりあえずスーツを脱いだ。
カズがこの家に来た時用に、と、雅紀さんがつくってくれた引き出しから、スエットの上下を引っ張り出して、もそもそ着替える。
着きました、とだけ、LINEをとばし、テレビをつけてラグにちょんと座った。
お笑い番組を、見るともなしに見る。
でも、心はなんだか上の空。
恋人の家で、帰りを待つ日がくるなんて思わなかった。