第7章 月虹
雅紀さんは、こんなにも俺の事を考えてくれていた。
悩み悩んで、横山さんに心配されるほどに、だ。
俺は、雅紀さんはそんなこと考えていないのかもな、なんて、半ばあきらめていたというのに。
なんなら、俺を抱きたいなんて思ってないかもなんて、見当違いなことまで思ってたのに。
俺の体の負担を考えていてくれたなんて………
胸がいっぱいになる。
こんなに大事にされてたんだ。
衝撃と感動で、柄にもなく涙が滲みそうになり、あわてて俯いた。
鼻をすする俺に、横山さんは、絶対に気がついてるのに、見て見ぬふりをしてくれてる。
ほんとに優しい人だ。
「…………大丈夫か?」
「……」
小さく問われ、こくりと頷いたとき。
「あれ、二宮……とヨコ?」
不意に背後から声がかかり飛び上がった。
ぐーの手で目を素早く擦り、顔をあげた。
「………お疲れ様です。係長」
「おー、早かってんな、相葉ちゃん」
「どしたの?なにしてんの?」
不思議そうな顔をする雅紀さんに、横山さんはすかさず歩み寄り、雅紀さんの肩を抱いた。
「ちょうどよかった!明日の俺の先、すげー金額言ってきてんねん。見てん?」
「お?おお。」
雅紀さんは、歩きながら、ちらりと俺を心配そうに振り返るから、俺は笑顔で、大丈夫です、と、手を振った。
雅紀さん。
俺、決めたよ。
あなたと一歩進む。