第7章 月虹
俺は、慌てて立ち上がり、横山さんの背中をグイグイ押して、フロアのすみっこに追いやった。
「なんやのん~」
されるがままの横山さんが、へらへら笑って俺を見下ろすから、俺は小さく怒鳴った。
「……そんな話、こんなとこでしないでください!」
「照れてんの?いや、ニノも可愛いとこあんねんなぁ」
耳まで真っ赤やで、ってからかわれて、正直俺も大パニックだ。
いやいやいや、マジなにいってんの。
大体……!
「まだしてませんから!」
俺が、思わずほんとのことを口走ったら、横山さんが、目を見開いた。
「え?」
しまった
咄嗟に口を覆ったが、そんなことしたって言った言葉はもとにはもどらない。
目を丸くした横山さんを正視できずに、俺は俯いた。
あああ、俺のバカバカ!そんなことまでバカ正直に言うことないのに!
だが、一連の俺の反応で、横山さんには分かったのだろう。
「マジ?まだなん?」
「…………」
「なんや……いつまで清い関係やの」
「横山さんっ」
俺が咎めると、横山さんは本気で残念だ、という顔になり、あーあ、と壁に背を預けた。
「んじゃ相葉ちゃんまだ悩みは解決してへんやん………」