第7章 月虹
「もぉ、相葉ちゃんずっと悩んどってんで。そのうち禿げるんちゃうん思っとったから、安心したわ」
ホッとした顔をしてる横山さんの言葉に、俺をいじる要因がみつからなくて、戸惑う。
てか。
「…………悩んでた?」
どういうこと?
「そやで。おまえに嫌われたらどーしよーとか言うててんで」
もう大丈夫やなーって、うんうんと頷きながらイタズラっぽくいうから、なんだか逆に焦ってきた。
俺に嫌われるって何がだよ?
「え、待ってください。なんの話……」
「またまた。照れんでもええがな」
「いえ、別に俺は…」
「まぁまぁ!俺は相葉ちゃんとは、こーゆー話はむかーしからしとるから気にならへんで」
「あの、だから」
なんだか横山さんが暴走してる。
俺は、事情が飲み込めないまま進んでゆく話から、なんとか情報を得ようと試みるが、うまくいかなくて、思わず横山さんの腕を掴んだ。
「あの、すみません。なんのことですか」
すると、今度は、へ?と、横山さんがキョトンとした顔になった。
「え……したんやろ」
「何を」
「…………言うてええのん?」
「?………はぁ」
意味が分からぬまま、頷くと、横山さんは長身をかがめ、俺の耳に小さく囁いた。
「えっち」
「…………は?」
そうして、目を細めて笑顔になった。
「相葉ちゃんと、やっと結ばれたんやろ?よかったなぁ」
…………
脳みそでその言葉の意味と先程の横山さんの言葉を反芻して。
「え???!」
俺は、文字通り顔から火が出た。