第7章 月虹
雅紀さんの話によれば、横山さんにだけは、俺との事を話してあるらしい。
それはなぜかというと、横山さんは、雅紀さんの過去を知る唯一の人だからだそうだ。
雅紀さんが昌宏さんを亡くしたばかりのときも、ずっと寄り添ってくれていたって。
だから、横山さんは、雅紀さんが1番信頼している人だ。
その後も、彼女も彼氏もつくらず、ずっと智の面倒だけをみていた雅紀さんを、常に気にかけてくれていた。
『………だからさ、俺が幸せをもう一度始めたことを、あいつにだけは、報告したいんだよね……いいかな?』
………そんなん言われて、嫌ですなんて言えるわけないよ。
俺は、もちろんです、と頷いた。
でも、雅紀さんは忘れてる。
横山さんって、人をいじるのも大好きだから、最近事ある毎にからかわれるんだよな。
悪意はないのはわかってんだけど。
……耳が熱い。
俺は、ふーっと深呼吸をして、横山さんが送ってくれたという資料を確認すべく、メール画面を開いた。