第7章 月虹
そこへ、俺の視線に気づいたのか、横山さんがこっちにこい、と、手招きしてくる。
え、なんだろ
慌てて席をたち、そばにいくと、
「お前明日、J社やろ。参考になる資料俺持っとったから、お前のパソコンに送っといたったで」
「あ…ありがとうございます」
お礼をいうと、横山さんは、ニヤリと笑った。
この人は、言うこともやることも破天荒だが、こうやって後輩をさりげなく助けてくれる人だ。
やっぱり仕事のできる人は違うよなぁ……
そんなことを思っていたら、横山さんがちっちゃな声でぼそりと耳打ちしてきた。
「あとな。そんな見つめとったら相葉ちゃんに穴あきよるで」
「!!」
思わず固まると、
「おー…耳真っ赤やん。かわいーなニノ」
ここぞとばかりに横山さんが面白そうにいじってきた。
「ヨコ。あんま二宮いじめないで」
一部始終を見てた雅紀さんが、呆れたようにとりなしてくれたけど、モーレツに恥ずかしくなった俺は自分の席に急いで帰った。