第6章 春の虹
そうはいっても、二宮くんが少し緊張気味なのは分かった。
さっきから何度も時計を見上げては、なんとなくそわそわしてる。
仕方ないか。
……実は俺もちょっとドキドキしてる。
俺は、落ち着こうと深呼吸して、ポットのスイッチをいれて、珈琲の粉の缶を手に取った。
……それは、智たちに、二宮くん………カズと付き合ってることを、今日、明かすことにしてるからだった。
数日前に、『2人に紹介したい人がいるから、会ってほしい』と、智に電話したら、あいつは電話口で一瞬息をのみ、それから、是非!と快く了解してくれた。
あいつらのことだ。
俺が、昌宏さんではない他の人間と付き合うことに、驚きこそすれ、嫌な顔なんてしないと信じてる。
でも、その相手があいつらのよく知る人間だとわかったとき、どんな反応をするか、予測がつかないのが正直なところだ。
まして、智にしたら、自分の幼なじみであり、振った相手でもある。
松本も特に仲良かったという話も聞かない。