第6章 春の虹
Aiba
俯きがちの二宮くんの耳は真っ赤。
……………可愛いな
俺は、何だかとても温かな気持ちで彼を見ていた。
二宮くんが、昌宏さんのことを気にするのは、当たり前だと思う。
俺自身も何度も自問自答したことだ。
昌宏さんを裏切ることになるかな、と何度も考えた。
だけど、そんな発想が浮かぶこと自体が、俺が二宮くんにどうしようもなく惹かれていることを裏づけてたことに気づいた時、なんだか、妙に納得できたんだよね。
ごめんね、昌宏さん。
智と、ヨコに後押しされたのももちろんあるけど、最後は、二宮くんの涙につられて、自分の想いがするすると出ちゃったよ。
「……二宮」
名を呼ぶと、
「………はい」
と、仔犬のような瞳で俺を見る。
今、一緒に息をしているこの世界に、好きな人がいる幸せ。
もう一度経験させて。
「え…と。お腹大丈夫か?」
「あ………はい」
「なんか食う?」
「いえ……大丈夫です。ありがとうございます」
俺を見上げた二宮くんは、ほんのり赤い頬で微笑んだ。