第6章 春の虹
「愛してるよ。幸せだった。だけど………それは今は身内への愛に近いかもしれない」
「………」
「だって。昌宏さんと過ごした時間より、智といた時間の方が長いんだよ、俺。もはや立場は伯父じゃん?」
相葉さんは、クスクス笑う。
自嘲的なものではなくて、ほんとに心から楽しそうな表情。
それは、これまで積み上げてきた日々が、大切で素敵なものであったことを物語る。
「このあいだ智に言われた。好きな人がもしできたら俺に遠慮しないでって。それってさ、再婚相手を探してる親父に言うセリフじゃない?」
「サトに………」
「だから……さ。こんな言い方間違ってるかもしれないけど、俺の感覚は再婚に近い。昌宏さんは、確かに胸の奥にいるんだけど、今、俺が好きだと思うのは二宮なんだよ。………そんなのダメ?………かな?」
しりすぼみに小さくなってゆく声は、相葉さんの自信の無さを表していて、俺は、慌てて首をふるふると振った。
好きなのは二宮。
その言葉が。
「………嬉しい……です」
俺は、はにかんで俯いた。