第6章 春の虹
ふと、時計をみると、9時になろうかとしている。
まだまだ別れがたいが、救急にかつぎこんだ二宮くんを、そんなに引き止めるわけにもいかない。
元気なら夕飯も一緒にってとこだったんだけどな。
………仕方ないか。
それに明日も仕事だし。
残念な気持ちを胸の奥にしまいながら、俺は立ち上がった。
気持ちが通じあえた。
それだけで、今日は充分だと思った。
「そろそろ送るね。もう家で薬飲んで寝てよ」
「あ……はい」
ソファに座ってた二宮くんも、続いて立ち上がる。
だが。
ふらりと揺れた体に気づき、慌ててその痩身を抱きとめた。
立ちくらみか?
「大丈夫?」
「あ……すみません。一瞬…真っ暗に」
俺の腕の中で俯いた二宮くんが、しばらくじっとして、もう大丈夫です、と俺を見上げた。
「…………」
「…………」
視線が絡み合った。