第6章 春の虹
俺が、想いを隠し、ずっと黙っておこうと思った、おそらく最大の理由。
俺は、震える唇を動かした。
「…………係長は……サトのお父さんをまだ愛してますか」
そして、じっと相葉さんの目を見つめた。
相葉さんは、軽く目を見開いた。
死んだ人には一生かなわない………俺はそう思っていて。
だって、2人は別れたわけじゃないから。
思いあっていたのに、突然、永遠に会えなくなった、だけだから。
愛してる気持ちが、そう簡単に消えるはずない、と思うから。
ドクンドクンとなる心臓に手を当てて、相葉さんの言葉を待つ。
すると、相葉さんは、ふっと優しい目になり、うん、と頷いた。
「………愛してるよ」
「…………っ……じゃあ」
じゃあ、ダメじゃないか。
俺は相葉さんの心には入れてないじゃんか。
少しの抗議をこめて、反論しかけると、
「でも、それは………お前を好きなのとまた違う種類の愛なんだよね」
…………………
「………どういうことですか」
うん……と、頷いて、相葉さんは、数々の写真を振り返った。