第6章 春の虹
相葉さんは、そう言ってふふっと微笑んだ。
「…………だから、というわけじゃないんだけど。
もしもお互いに同じ気持ちなら、気を使ってる場合じゃないなぁって思って」
「…………」
「好きな人と、想いが重なったときって。すごく嬉しいし幸せだろ?」
「……………はい」
「もう一度……そんな想いをしてみたかった。お前にもそんな想いをしてほしかった。それが俺がアクション起こした理由なんだ」
相葉さんは、最後照れるように肩をすくめて、ずずっとミルクを飲んだ。
俺も、少し冷めて触れやすくなったマグカップを、そっと手に取った。
…………想いが重なった。
そういう表現をする相葉さんを素敵だと思った。
そして、そんな奇跡がほんとに起きたことに、俺は今更ながらドキドキしていた。
男同士なんて、極めて稀な可能性が、叶うなんてこんなことあるんだろうか。
ふと、相葉さんの肩越しに、数々の写真立てが目に入った。
……………相葉さんの亡くなった恋人。
サトのお父さん。
「…………あの。ひとつだけ聞いてもいいですか」
俺は、縋るような目で相葉さんを見上げた。