第6章 春の虹
「………俺はね、二宮。さっきも言ったけど、ほんとは、この先もずっと、お前に想いを告げるつもりなかった」
「………………」
「お前は、若いし、女性社員のウケもいい。俺から起こしたアクションで、お前の気持ちを無駄に引っ掻き回す必要はないって思ってた」
相葉さんは、真摯な目で語る。
だから、俺もそんな相葉さんをじっと見上げた。
俺たちの間を、マグカップからの湯気だけが、ふわりふわりと揺れる。
「………でもね。ヨコに言われたんだ。二宮が、昔の俺と同じ目で俺を見てるって」
「…………昔?」
「昌宏さんを追いかけてた頃の………俺」
「……………」
胸がツキンとする。
俺が永遠に越えられない相葉さんの恋人。
それを考えると不安になる。
俺…--ほんとに相葉さんに受け入れられたのかな?
そんな俺に気づいてるのかいないのか。
相葉さんは、遠い目をして、懐かしそうにうんうんと頷いた。
「で、思い出した。俺も昌宏さんに同じこと言われたなって。お前は若いんだから、俺みたいなオジサンやめとけって」
「……………」
「でも、それ言われてすごい悲しかったんだ。俺が貴方を好きになった理由にそんなの関係ないって。勝手に結論だすなよ、って」
「………………そう……ですね」
「でしょ?嫌いって言われたらあきらめるけど、そんな断られ方到底受け入れらんないって」