第6章 春の虹
「はい、どうぞ」
ふわふわと湯気のたつマグカップが、コトンと目の前のテーブルに置かれた。
甘い匂いが、鼻腔をくすぐり、久しぶりに『美味しそう』と思った。
「コーヒーはさすがにダメだろうから、ホットミルクにしたよ」
「………ありがとうございます」
「熱いから気をつけてね」
言って、相葉さんは、自分も同じものに口をつけ、
アチと言って、首をすくめた。
………ふふ…
俺に、熱いよって言ったところじゃん、と、緊張してた気持ちが、ふっと和んだ。
マグカップを両手でそっと包むと、冷えきった指先がじんわりと温まる。
ふー、と息をふきかけて、ちょっと舐めると砂糖が少し入ってるのか、ほんのり甘くて。
相葉さんみたいに優しい味がした。
「…………あのさ」
それまで黙ってた相葉さんが、口火を切った。
「あの………ほんと?」
「…………何がですか」
「その……俺を……好きって」
「……………………はい」
そこ?
何度も言わせるのは、罰ゲームだぞ、と、俺は熱くなってきた頬に力をこめた。