第6章 春の虹
帰り支度をして、処置室をでてからも、相葉さんは黙ってた。
………どうしよう、と思ったけど、結局何を言ってよいかわからなくて、俺も黙ってた。
相葉さんが、俺を好きだ。と言って。
俺も相葉さんを好きだ、と言った。
これって、両思いだよね??
嬉しい…………嬉しいはずだけど。
だけど。
気持ちが通じた幸せとかを、まだ確かめあったわけじゃないから、なんとなく気分がモヤっとしてる。
そして、それはきっと相葉さんも同じなのだろう。
ロータリーには、客待ちのタクシーが並んでいて、相葉さんの歩調にあわせ自然とそちらに向かっていたが、相葉さんは、ふと歩みをとめた。
そして、困ったような顔をして、俺を見下ろした。
「あのさ……ほんとならすぐに帰って休んでもらわないといけないのは、分かってるんだけど」
「………はい」
「もう少しだけ………話したい。俺の家にきてくれる?」
「…………は………い」
「帰りは送るから」
「…………はい」
相葉さんは、じゃ、行こうといって、タクシーに近づいた。
ドライバーが俺たちの姿をみとめて、後部座席の扉を開けた。