第6章 春の虹
「に…二宮、それって」
ピーピーピーピー
相葉さんが、震える声で口を開いたのと、頭元のアラームが鳴ったのが同時だった。
……すっごいタイミング……
高鳴る心臓を抑えつつ、見上げれば、3分の1ほど残ってたパックは、綺麗になくなってて。
完全に話の腰を折られた相葉さんは、ぎくしゃくとした動きで、立ち上がった。
「あ、……えと…点滴…終わった…のかな?」
「………みたいです」
「……看護師さん呼んでこようか」
「…あ、いえ、終わったら、これを押せって言われてて」
俺は、渡されてたナースコールのボタンに手をのばす。
「……………」
「……………」
看護師さんが来るまで、どちらともなく口をつぐんでいた。
何を言ったらいいのかわかんないし、相葉さんが何を言おうとしていたのか、聞きたかったし。
……話を中断させられるのも嫌だったし。
やがて、終わったー?と、肝っ玉母さんのような看護師さんが入ってきた。
手早く処置をして、
「じゃあ、きちんと薬飲んでー、ゆっくり休んでね?」
俺の肩をポンポンと叩いてくれる。
「………お世話になりました」
俺がぺこりと礼をすると、看護師さんは、相葉さんを身内だと思ったのか、
「今日は、この子にあんまり胃に負担になるものは食べさせないでね」
と言った。
相葉さんは、はい、と言いながら何度も頷いてた。