第6章 春の虹
俺は、鼻をすすりながら相葉さんの言葉を待つ。
相葉さんは、言いにくそうにしながらも、何かを俺に言おうとしていて。
…………まだ、内密の話でも?
不安に思いながらじっと黙っていると。
「………変なこときくけどさ」
しばらく逡巡していた相葉さんは、やがて意を決したように、俺を見つめた。
「俺の思いあがりだったら、忘れてね」
「…………?……」
なんだろう………
小さく頷いた。
「………いま、おまえが泣いてるのってさ………俺が転勤しないでよかったって………思ってるから?」
「………………」
「体調崩すほとのストレスも、俺がいなくなるかもって思ったから?」
「………………」
迷った。
はい、なんて言ったらキモすぎるだろう……?
だけど…………この状況を説明する他の理由が見当たらない。
えい、ままよ、と、俺は、ヤケクソで頷いた。
部下なら、上司の転勤を寂しがってもおかしくないだろ。
すると、相葉さんは、そっか、と、真剣に頷いた。
そして、もうひとつ爆弾をおとす。
「あとさ、前に………海に行った時も、おまえ泣いてたろ。あれは………」
「………………」
「……………えっと………その、それも俺?………のせい?」
俺は固まる。
なんだか、話が別方向にいこうとしてるのが感じとれる。
まるで、気持ちを確かめさせられているような。
今まで目を背けてた真実を見ろ、といわれてるような。