第6章 春の虹
格好悪いと思うのに、涙が勝手に溢れてくる。
「……?どした………?」
「…………すみませ…ん」
相葉さんが戸惑ってるのがわかって、なんとかしようと思うけど、どうにもなんない。
ここ2週間ほどのストレスの最たる原因が、あっさり解決したんだ。
ぷつりと切れた涙腺は、そう簡単にはとまらない。
相葉さんが転勤しないということは、まだ一緒に働けるということ。
くだらないことを話して、飯食って、笑いあってすごせるということ。
それがたとえ、ただの部下の立場だとしても。
何度も指で目尻をぬぐうが、それもおいつかなくなり、俺は針の刺さってない方の手で目を隠した。
好きだ、という想いに無理矢理終止符をうつのは、もう少し先でもいい。
それが何より嬉しかった。
「すみません………」
俺は、目をおおっていた手でごしごしと顔を拭う。
「二宮………」
すると、おずおずと、相葉さんが俺の髪を撫でた。
ドキリとする。
相葉さんの大きな手のひらが、優しく撫でてくれるのが心地いい。
「あの………さ」
「……………」
「あの……」
「……………」
「えっと……」
何かを言い淀んでいる相葉さんを指の間から、ちらりと見上げた。