第6章 春の虹
「箝口令ひいてても、もれるもんなんだなぁ……」
相葉さんが、まいったなぁ…というように呟いた。
「じゃあ……やっぱり」
絶望的な気持ちで、また痛み出した胃の上をぎゅっとつかむ。
すると、相葉さんは、………まだナイショだよ?と、声を潜めた。
「俺じゃないんだ。転勤」
「………え?」
「俺は断ったの」
「……………そんなこと……できるんですか」
サラリーマンなのに?
「欠員が出たから、という理由だったから、俺の意見を聞いてもらえたんだよ。でも、昇進には興味無いし。で、かわりに加藤を推薦してやったんだよね。そしたら、そっちで話が転がり始めたんだ」
………………ほんと?
「………二宮?」
「………係長…転勤しないんですか」
「うん。あれ?………転勤した方がよかった?」
「…いえ!」
……………よかった………
視界がぼやける。
ホッとした気持ちが、ロックしていた涙腺を崩壊させた。