第6章 春の虹
でも、仕事に私情ははさんじゃダメだと思うから。
そこだけはきちんとしてるつもりだ。
「そんなことないです……」
俺はふるふると首を振った。
すると、俺のスケジュールを把握する立場の相葉さんは、思い出すように宙をみつめ……俺を見た。
「来月早々に、でかい取引はいってるじゃん?その準備が大変?」
「いえ…」
「そう?俺、その日同行するからさ。ヘルプはいつでも受け付けるから言えよ?」
「は………い?」
反射的に頷きかけて、止まる。
同行?
俺が固まってるのをみて、相葉さんが変な顔をした。
「なんだよ………俺、行かない方がいい?」
「いえ、そうじゃなくて」
相葉さん、来月から関西じゃないの?
内示の段階で俺が知ってるのは、まずいのかもしれない。
だけど、聞かずにはいられなかった。
「……転勤だって、聞きましたけど」
「………誰が?」
「係長………」
すると、相葉さんは、あー、というように頭をかいた。