第6章 春の虹
静かな部屋にコンコンというノックの音がして、俺はあわてて手のひらで顔をぬぐう。
「……二宮?」
俺のリュックを持った相葉さんが、心配そうな表情で現れた。
「どう?少しはマシになった?」
「あ………はい」
俺は頷いて、バレないように小さく鼻をすすった。
「さっき、そこで看護師さんに出会って、点滴終わったら帰っていいですよってさ」
相葉さんは丸椅子をガラガラひきずって、俺の頭元に座る。
「部長にも報告済。明日も調子みて、もしダメだったら休めって」
「……すみませんでした」
「……こないだは俺だったから、おあいこだよ」
「はい……」
相葉さんは、俺の顔をじっとみて、仕方ないな、というように微笑む。
俺は、どこを見て良いのか分からなくて、針のささった腕をじっと見つめた。
「………なぁ。聞いてもいい?」
しばらくして、相葉さんが遠慮がちに口を開いた。
「………はい」
「仕事さ………辛い?」
「……………」
ストレス性と言われたんだ。
原因はここにある、と思われても仕方ない。